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2007.02.08 Thursday

役者の自立

劇研アクターズラボの大きな目的一つは「表現者(俳優)の自立」支援です。
さて、自立とは何かということですが、それは1つには経済的な自立。もう一つは精神的自立。ということです。
 経済的な自立には、演技力以外の要素も多くあるので、ちょっと置いておいて、まずは精神的(心構えとしての)自立に関して述べてみたいと思います。

 いろいろな方から「役者になりたいんですけど、東京にいかなきゃだめでしょうか」といった相談を受けます。その度に戸惑うのですが、もちろん東京の方がチャンスは多いことは誰でもわかる話しなので、確率から言ったらそれはそうするべきでしょう。でも、実際私が知る限り東京に行って成功した人は次のような3つのパターンです。1:才能が頭抜けている人(持って生まれたキャラクター、センスなどが素人目にも明らかな人)2:大学、専門学校、国立養成所など専門教育を行う機関や大手劇団などが運営するしっかりした養成所に入学した人。3:こちらで行っていた活動が認められるなどして、求められて東京に行った人。
 結局、才能と努力そして、それを認めてくれる人との出会いが結実すれば成功するということなのですが、よくある失敗パターンは「求められてもいないのに行ってしまう」という場合です。私は先のような質問を受けたとき、失敗パターンにならないようにだけアドバイスすることにしています。そのポイントは「自分(もしくは自分たち)を過大評価してやしないか」ということです。夢を持つことは大切です。しかし、京都ですら評価されていない人が、東京で認められる可能性はとても低いのです。ピアノが弾けないピアニストはいません。ところが演技のできない「役者」は沢山います。たいがいの場合「じぶんができていない」ことを自覚すらできていないのです。また、勉強しに行く場合でも、こちらで特に努力してこなかった人が、東京(海外)に行ったからといって努力する可能性もこれまたとても低いのです。一流の養成所に合格して行くならともかく。誰でも入れるような養成所に入るくらいなら京都にいても全くかわらないのです。無名の小劇団に入団するのもキャリアとしては京都の劇団にいても全く同じです。むしろ生活費が安い京都にいる方が訓練に割ける時間も長く、創作環境も充実しているのです。たいがいの人は「(評価する人がいないだけで)自分はもしかすると1のパターンで、東京に行けばなんとかなるんじゃないだろうか」と思っています。でも1のパターンの人は初舞台、もしくはほとんど舞台経験の無いうちから別格な存在感を示す人のことを言います。私の経験からしても2.3回舞台を経験して、見ず知らずの複数の人から「よかったです」の声がかかったり、他の複数の劇団などから出演依頼がくるようでなければ、1のパターンはありえません。実際そういう人を何人か見てきましたが、初舞台というか、稽古を見た時ですら「この人は違うな」と思いました。ですから、そういう人は私に相談するまでもなく、劇団から声がかかったり、有名養成所、プロダクションなどに合格するなどして、さっさと未来が開けてゆきます。
 つまり、たいがいの人は「努力」で未来を切り開かなければならないのです。やっとここからが本題です。そのとき、どうすればいいか「役者志望」の多くの人は困ります。まずは出演できなければ話しにならないということで、劇団などに所属するわけです。劇団に入れば「公演」が待っています。「劇団員」として一生懸命雑務もこなし、「劇団の成功イコール自分の成功」を夢見るということになるのです。そのせいか、現代劇の俳優さんは自分の「芸」に対してのアイデンティティーより、どこに所属したか、どんな作品(高名な演出家の作品や、プロデュース公演など)に出演したかといったことにアイデンティティーを持つ傾向があります。しかし最後にはやっぱり「芸」の力がものをいうのです。優秀な演出家と対等に付き合えるには、演出家に信頼されるだけの「何か」がないと無理なのです。いい役者さんにはそれを応援しようという観客が必ずつくものです。逆によくないとせっせと劇団の仕事をしたところで、劇団内でも居場所が薄くなる。つまりたとえ劇団員であっても結局俳優である自分を自分できちんと見つめる必要があるということなのです。所属の無い役者さんは当たり前のことながら、「自分」を買ってくれる人がいるかどうかが問題な訳ですから、そのために自分で自分を磨くしかないのです。
 アクターズラボでも今年から演出家によるワークショップ(オーディション)を開催してゆきます。そのせいか、○○さんの公演にぜひ出たいんですがどうすればいいでしょうか?という質問も受けるようになりました。受かるかどうか聞く前に、まず自分がそのために何をしているか。普段から演技者としてどんな生き方をしているか考えてみてください。一般の人とあまり変わらなかったり、何もしていなければたぶん受かりません。あなたに才能があればとっくに声がかかっています。そうでないあなたはまずは何かをしてゆくしかないのです。あなたが初心者だとしたら、出演機会を得てゆくことです。そして、演技について、舞台芸術について勉強し、よく考えることです。そして自分を磨いてゆくことです。いわずもがな、沢山の舞台を見て、自分はどんなものが好きかを考えることも大切です。以前ブログにも書きましたが、例えば能楽師は朝から晩まで毎日能楽漬けです。生き様が能楽師なのです。それくらい芸に打ち込むからこそ、芸が磨かれ「価値」を持つのです。ひいては芸に対しての誇りも生まれるのです。
 自立するということは、自分が「役者(アーティスト)」たりえているかをきちんと見つめ、そうなる(そうある)ためのあたりまえのことを、あたりまえのこととしてしているかということなのです。評価は客観的なことです。自分を信じることは大切ですが、「わたしはいけてる」と思い込むことは間違っています。また、座長など特定の人の評価だけを妄信することでもないのです。つねに客観的に「私」を見つめ(見つめざるを得ないような環境に身を置き)検証しなければならないのです。
 私は「東京に行かなければ成功しない」と考えるよりも、「きちんとやっていれば京都でも認められる。」という考えをもつ方が健全だと思っています。「自分がどうありたいか」をイメージしそれに向かって地道な努力を繰り返すことが「こうすればなんとかなるんじゃないか」とおもって、むやみに高名な演出家の公演に飛びついたり、あてもなく東京に行ったり、やみくもに留学したりすることよりずっとずっと大切で、成功への近道なのだと思うのです。(企画:杉山準)
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