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2006.10.26 Thursday

ラボを始めた理由 その1 

 以前某養成所で講師をしていたことがあって、タレントや役者を目指す子供から、大人までいろいろな人に演技のワークショップをおこなった経験があります。始めたころは週1回、しかも1時間30分程度のワークで果たしてどれくらいの成果が出るのか、私は正直その効果を疑っていました。ところが、1年ぐらいワークを続けるとなかなか上手くなるのです。だんだん彼らと一緒に芝居を作りたいという欲求まで起こってきました。
 私は自分が受講した数々のワークショップ、そして企画したワークショップの授業を見て学んだこと。そして、書物から学んだ知識や役者の体験をもとにして、その中から確信を持って語れるわずかな内容でワークを組みたてていました。自分では努力してきたつもりですが、残念ながら演技という多様で複雑な技術の一片しかカバーできていないことや、彼らがプロの俳優になるためにはさらに多くの訓練を要することも感じていました。それでも、あきらかに続けることで成果はでたのです。それを見た時にこうしたレッスンの必要性を感じました。アマチュアであってもスポーツは結構練習をします。なのに演劇では基礎練習すら我流で、日頃はなんら稽古をしていない「役者」が多数であるという不思議さ。初心者が演劇を始めようとするととても敷居が高いという問題。そんな、演技や役者にまつわる問題は、継続的なワークが気楽に受けられる仕組みによって改善するのではないかと考えたのです。

 ところで、私が担当していた生徒に声優を目指す女の子がいました。クラスを2年ぐらい受けたでしょうか。彼女はとても不器用で、自分に自信が無く、人が一回でできることを何度も失敗してしまいます。学校ではもしかするといじめられていたかもしれません。家庭の事情もあったのでしょう、毎日のように長時間アルバイトをしていました。過労で倒れながら、自分で稼いだお金でレッスンに通っていました。クラスの中でも彼女はちょっと浮いた存在で、彼女と組みたがらない生徒もいただろうし、熱心に質問することを疎ましく思っている人もいたでしょう。
 ある日のこと、私は短いセリフを使って即興演技の練習を行いました。繰り返し行ってきたエクササイズです。いつもつらそうに演技していた彼女が、その日はすっと自分の心に素直な演技をしました。いつもと違う演技に他の生徒もぐっと目を注ぎました。彼女の生き様が浮かび上がるような「生きた演技」に、息をのんで見ていた他の生徒から自然と拍手が起こりました。それを見て私は涙がこぼれそうになりました。
 彼女とはそれきりになってしまいましたが、あの感動と彼女のはにかんだ笑顔を今も忘れることができません。
 海外の俳優養成機関が年間900時間を越える膨大な時間を基礎練習に割いている事例を見れば、劇研アクターズラボは遠く遠く及びません。本物のプロの技術を身につけようとすればラボだけで挑むにはあまりに遠い・・・。しかし、たとえ僅かであってもそれをすることで演劇の可能性は明らかに高まるのです。それは事実です。基礎練習は地味でわかりずらいものですが、演技の最も大切な部分に力を与えてくれます。例えばあの少女の演技は、奇跡ではなく努力の賜物だと私は思っているのです。

劇研アクターズラボ 企画 杉山準
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コメント
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  • 2006.10.28 Saturday 00:08
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